渋谷再開発~消え行くかつての風景に向けて

ファッションやライフスタイルにおいて、常に新しい情報を発信し続ける、活気に満ちた若者の街渋谷。現在、2027年完成へ向けて、渋谷駅とその周辺地区の大幅リニューアル工事が進められ、再開発が行われている。

戦後の高度経済成長期に、交通の要衝として大きな発展を遂げた渋谷駅周辺は、商業施設やオフィスビルがこれでもかと密集しひしめき合い、その風景は雑多でどこか猥雑な雰囲気すら漂わせる。昭和時代を懐かしむ向きには、そんな下町風情にも似た街並みに落ち着きを感じる人も多いだろう。

そうした渋谷駅に、近年になって続々と、埼京線湘南新宿ライン副都心線といった路線が乗り入れ、駅の様相が様変わりしてきており、そんななかで、もっとも古い地下鉄である銀座線渋谷駅も、現在の場所からの移設計画が進められている。

銀座線といえば地下鉄でありながら、表参道~渋谷間において見上げるような高架線上を走行する姿が、長い間渋谷を象徴する風景の一つとなっていたが、駅のリニューアルに伴い、慣れ親しんだその風景も、姿を消してしまうのだろうか。

 長い歴史をもつ渋谷駅周辺には、いつからか通りの掲示板に、日本語と並んで英語、中国語、韓国語の表示がなされ、近頃は街を歩いても日本語より、声高に飛び交う外国語の声がやたらと耳につくほどである。

しかし不思議なことに、そういったグローバルな側面も、渋谷の街に根付く雑多で、どこか懐かしく温かい風情に溶け込み、何の違和感もなく融和しているように感じられるのは、この街の持つ懐の深さゆえであろう。

再開発ののち、渋谷駅周辺は従来の街並みが一新され、新たに大規模なターミナル街として生まれ変わるといわれているが、古くから培われた独自の風情は、この先も消してしまうことなく残し続けてほしい。

渋谷の街に親しみ続けてきた人たちは、そんな願いを秘めつつ、着々と進められるリニューアル工事を見守っているのではないだろうか。