都会に残る江戸情緒「世田谷代官屋敷」

お洒落な店と下町情緒が混在する街三軒茶屋を始発として、静かな住宅街を走る路面電車、東急世田谷線
走行距離のべ5kmほどの道のりを、2両編成でゆっくり走る世田谷線は、環七の踏切で信号待ちをする姿が落ち着いた雰囲気を醸し、心和ませてくれる。 
しかし、その沿線には歴史上著名な人物にまつわる史跡が点在し、それらを見てまわることでプチ歴史巡りともいうべき旅が楽しめる。
その中のひとつ、「上町」駅下車徒歩5分のところにある「世田谷代官屋敷」。
江戸時代中期に、彦根藩世田谷領20カ村の代官を代々世襲した大場家の役宅で、都内で初めて、国の重要文化財に指定された由緒ある建造物。
無料で入ることができ、現在残っているのは主屋、表門、そして玉砂利が敷き詰められたお白州跡。
建物の中に入ることはできないが、風情ある純和風のつくりが、往時の雰囲気を偲ばせてくれる。
主屋は茅葺き屋根で、武家の屋敷というよりは、郊外の豪農の民家ともいうべき外観を醸し、人々の目に親近感を感じさせる。
その一方で、表門にある、太い格子の入ったいわゆる「武者窓」は、武家屋敷ならではの風格を感じさせるつくりで、近現代の建物ではまずお目にかかることのないもの。
近隣の街並みも静かで落ち着いており、まるで時代劇の世界にタイムスリップしたような、日常を忘れさせる雰囲気。
屋敷周辺では、世田谷名物「ボロ市」やホタル祭りも開催され、都心近くで交通の要路である
国道246号線沿いにあって、近隣住民の大切な息抜きの場、憩いの場となっている。
日常の合間、一息つきたいときにぶらりと訪れてみるのもいいかもしれない。