幕末の烈士を祀る古跡「松蔭神社」

閑静な世田谷の雰囲気に馴染み、住宅街を縫うように走る東急世田谷線

始発駅の三軒茶屋から3つ目の駅「松陰神社前」を下車し徒歩3分、国士舘大学の学生で若々しい賑わいを見せる街の一角に、幕末の思想家、教育者である吉田松陰を祀る「松蔭神社」がある。

境内は木々や緑があふれ、鳥がさえずり、近くに古くからある商店街と相俟って、程よく懐かしく、すがすがしい気分にさせてくれる。

神社には吉田松陰のほか、彼の門下生で、のちに近代国家の礎を築いた明治政府の元勲、伊藤博文山県有朋らが祭神として祀られ、松蔭はじめ多くの幕末の志士の墓が立ち並び、今の日本の土台を築いた先人の遺徳を偲ばせる。

また、長州藩士だった吉田松陰の地元、現在の山口県萩市にも松蔭神社があり、私塾「松下村塾」が現存しているが、世田谷の松蔭神社にはその精巧なレプリカがあり、まるで江戸の街へタイムスリップしたかのような雰囲気が味わえる。

激動の幕末の時代に、新しい日本のあるべき姿を懸命に模索し続けた先人の魂に触れることで、何とも厳粛な思いに胸打たれることだろう。

神社に寄進された燈篭には、乃木希典桂太郎井上馨青木周蔵など、明治の元老の名前が刻まれている。

また近隣の豪徳寺に、安政の大獄を実行した井伊直弼菩提寺があるのも、皮肉ではあるが歴史の面白さを感じさせるものであろうか。

日本を世界と肩を並べる国家にすべく、粉骨砕身したこうした先達の努力の上に、今の私たちの生活があることに思いを馳せながら、境内でのんびりくつろいでみるのもいいかもしれない。