聖徳太子が境内から人々を見守る「円泉寺」

交通や文化の要衝である渋谷に近接し、おしゃれな街として人気を集める三軒茶屋

その駅前の商店街から離れた住宅地の一角に、ひっそりと埋もれるようにたたずむ「円泉寺」がある。

南北朝時代から続く由緒ある寺院で、現在残る建物も、火災ののち幕末期に建て替えられた由緒ある建造物。

門の周辺にはいちょうやケヤキの大木が枝葉を広げ、物静かで落ち着いた雰囲気を醸し出している。

また周辺の、ごくわずかに個人商店が点在するほかは、一般住宅が立ち並び人通りも少なく、日中でも急くことなくゆっくりとくつろげる空間を演出している。

門前に到着するとまず目に入るのが、門の脇にある太い古木の洞に祀られている2体の小さな石像。ここに花や賽銭を手向ける人も散見される。

そして境内に安置されているのが、弘法大師の作といわれる聖徳太子像。

近年ではその実在を疑う説もあるが、飛鳥時代に、当時の先進国隋との交流で体制や文化を積極的に取り入れ、憲法十七条や冠位十二階を制定し、日本国家の礎を築くのに多大な貢献を果たしたとされ、現在までその名が伝えられる偉人である聖徳太子は、静かな境内の中から、ふっくらと豊かな頬をたたえた穏やかな表情で、日々の住民の生活を見守り続ける。

恒例の節分会や、また年末には除夜の鐘も鳴らされ、歴史を持ちながら市民の生活に溶け込む円泉寺。日常の合間、散策がてらに訪れ、聖徳太子とつかの間のひとときを過ごすのも良いかもしれない。